大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成2年(特わ)236号 判決 1990年6月26日

本籍

埼玉県行田市忍一丁目三四八番地

住居

埼玉県行田市忍一丁目一〇番三一号

建築士

松本安弘

昭和二一年一月一九日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官渡辺咲子出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年六月及び罰金五〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、埼玉県行田市忍一丁目一〇番三一号に居住し、地産トーカン株式会社に勤務するかたわら、同社社員として自己が関与した不動産取引に関し、取引先から謝礼金を得ていたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、取引先を売買取引の仲介人として関与させ、その取引先から簿外で謝礼金を支払わせるなどの方法を用いて雑所得を秘匿した上

第一  昭和六〇年分の実際総所得金額が一億二〇四八万二六三八円あつた(別紙1修正損益計算書及び別紙2脱税額計算書の総所得金額欄参照)のにかかわらず、昭和六一年三月一五日、埼玉県行田市栄町一七番地一五号の所轄行田税務署において、同税務署長に対し、昭和六〇年分の総所得金額が一〇四八万二六三八円であり、これに対する所得税額は既に源泉徴収された税額を控除すると一二八万三一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告署を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もつて不正の行為により、同年分の正規の所得税額七〇四四万九四〇〇円と右申告税額との差額六九一六万六三〇〇円(別紙2脱税額計算書参照)を免れ

第二  昭和六一年分の実際総所得金額が一億八九五四万一二二五円あつた(別紙3修正損益計算書及び別紙4脱税額計算書の総所得金額欄参照)のにかかわらず、昭和六二年三月一六日、前記行田税務署において、同税務署長に対し、昭和六一年分の総所得金額が九五四万一二二五円であり、これに対する所得税額は既に源泉徴収された税額を控除すると二九万三六〇〇円の還付を受けることとなる旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もつて不正の行為により、同年分の正規の所得税額一億一七四九万四〇〇〇円と右申告税額との差額一億一七七八万七六〇〇円(別紙4脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書五通

一  収税官吏作成の謝礼金収入の調査書

一  税務署長作成の証明書

判示第一の事実につき

一  若松俊男の検察官に対する供述調書謄本

(法令の適用)

罰条 各所得税法二三八条一項、二項

刑種の選択 懲役刑と罰金刑の各併科

併合罪加重 刑法四五条前段、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第二の罪の刑に加重)、罰金刑につき同法四八条二項

労役場留置 刑法一八条

執行猶予 刑法二五条一項(懲役刑につき)

よつて、主文のとおり判決する。

(求刑 懲役一年六月及び罰金六〇〇〇万円)

(裁判官 柴田秀樹)

別紙1

修正損益計算書

松本安弘

自 昭和60年1月1日

至 昭和60年12月31日

<省略>

別紙2

脱税額計算書

昭和60年分 松本安弘

<省略>

別紙3

修正損益計算書

松本安弘

自 昭和61年1月1日

至 昭和61年12月31日

<省略>

別紙4

脱税額計算書

昭和61年分 松本安弘

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例